何の意味があって建て替えるの?
原価償却。
この考え方は「時の経過と共に固定資産の価値は減っていく」ことを基本としてなりたっている。
・・これが人間に適応されるとしたらどうであろうか。
「あなたの価値は年を経ていくごとに減っていき、60歳になると、価値がゼロになります。健康であろうがなかろうが、ボケていようがいまいが、多くの知識と経験がぎっしり詰まっていようがいまいが、多くの人に愛されていようがいまいが、年々価値が減っていき、きれいにゼロになります。もし60歳を越えてしまうと、あなたの価値は、むしろマイナスになります。だって、葬儀費や納骨費がかかるのですから。」
こんなことを言われた日には、もう生きていく気がしなさそうである。
でも、わが国の建築の世界では、この現象は極めて当り前のように受け止められている。
一般の銀行に行くと、ほとんどの場合この減価償却という、世界中でごく少数の国でしか採用していない方式で、価値が判断されてしまう。
・・減価償却の終わった住宅の建つ土地は、住宅の除去費用を引いた上で値付けされるのである。
(中略)
同潤会アパートと同じ時代に建った欧米の公的集合住宅は100㌫近く残っている。
欧米の研究者などを連れて、再開発前の同潤会アパートに見学に行ったことが何度かある。彼らは必ず
「何の意味があって建替えるの?」
「リニューアルして残すべきだ」といったことを私に投げかけた。別に彼らの全ては、いわゆる「保存派」に属する人ではない。
ごく普通の建築の専門家なのだ。彼らには集合住宅団地を建替えるという概念がそもそも一般的ではないらしい。
ニューヨークでは戦前に建てられたアパートの方が値段が高かったり、ドイツでは行政予算で歴史的なアパートの補修を行っている。文化の違いと言ってしまえばそれまでかもしれない。
集合住宅の時間 大月敏雄著 王国社
【所見】
著者は大学で建築を教えている先生です。30年、40年を経て建て替えをウンヌンしている国は、世界中どこを探しても、せいぜい日本だけだと言ってもいいようです。建て替えは、先ず、住宅産業を潤し、また自治体にとっても税収が見込めるということは確かかもしれません。少なくとも、そこに暮らす住民の為とは限らない、ということです。


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